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全損時諸費用特約

全損時諸費用特約というのは、車両保険に付けられる特約で、自分の車両が全損状態のときに、車両保険で補償される金額に加えて、一定額の補償を受けられる特約です。付けるべき特約ですが、車両新価特約を付けているのなら不要になる可能性が高い特約でもあります。

損害には事故による損害だけではなく、車両保険で補償される盗難も含まれます。保険会社によっては、車両保険に自動付帯されているため、存在を知らないかもしれません。全損時諸費用特約の補償額は、一般に車両保険金額の10%または20万円の少ない方です。

要するに、全損時には車両の価値に相当する補償額では、次の自動車を購入するための費用に足りないだろうから、いくらかプラスして支払いますよという特約です。なぜこの特約が存在するかは、全損の考え方にも影響しています。

■物理的全損と経済的全損

全損という言葉の定義には、車両の損害が大きすぎて、元のように走行できる状態に戻せない「物理的全損」と、修理によって走行できる状態に戻せるが、修理費用が車両の価値を超えてしまう「経済的全損」があります。

物理的全損においては、もう修復不能になっているので、車両の価値に相当する補償額で納得するしかないでしょう。それ以上を求めることは、保険によって利益を得ることになり、損害保険では許されません。

しかし、経済的全損においては、修理によって原状回復(損害前の状態に戻すこと)が可能であっても、原状回復をせずに、原状回復費用(修理費用)よりも少ない車両の価値を上限として、補償額が支払われます。車両の価値に相当する補償額を受け取っても、同じ車を買えないので、自己負担を余儀なくされることは、しばしばトラブルを引き起こします。

■経済的全損の考え方は変わってきている

以前までの全損への補償は、現在でも引き継がれている、車両の価値を上限とする補償であり、保険会社は断固としてこの線引きを譲りませんでした。

しかし、対物賠償事故における経済的全損に対する補償で、車両の時価に加えて買い替え諸費用を含めるべきという、被害者側からの訴訟が起こり始めました。車両の時価で補償されても、経済的な損失を補うには不十分だからです。

この請求に対して、裁判所は買い替え費用を認める判決を何度か出し、経済的全損の賠償として、車両の時価では不足していることを認めた形になります。もっとも、車両の時価に買い替え費用を加えた額が、修理費用を上回るときは、修理費用までになるのが当然の理です。

こういった背景もあり、経済的全損に対する補てんとして、全損時諸費用特約や車両新価特約が登場するようになりました。実は、保険会社にとって、数十万円の支払いよりも、トラブル対応の方がはるかに損失が大きく、顧客との未然のトラブルを防ぐためにも、次々と新しい特約が開発されているのです。

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