自動車運転死傷行為処罰法とは?
平成26年5月20日から、自動車運転死傷行為処罰法という新法が施行されました。この法律は、名称でもわかるとおり、死傷行為に繋がる危険運転を処罰する目的で制定されています。
それまでも刑法において、危険運転致死傷罪ならびに自動車運転過失致死傷罪が規定されていましたが、新法制定には、交通事故に対する国民感情が反映された背景があります。
■悪質な運転による事故でも処罰は軽い?
例えば、悪質な運転の代表格に、飲酒運転があります。飲酒運転については、重い処分が科せられるようになって、交通事故の件数も大きく減少しましたが、それでも重大な事故を起こす可能性は非常に高く、痛ましい事故が後を絶ちません。
しかし、飲酒運転で事故を起こしても、アルコールが抜けてしまえば、事故当時運転に支障を与えるほどの飲酒をしていた事実を証明できなくなるため、刑法上の危険運転致死傷罪は適用できず、過失扱いの自動車運転過失致死傷罪の適用が多くみられました。量刑としても軽くなるため、こうした状況は、多くの被害者の反発を呼び、全国的な署名活動にまで発展していきます。
■自動車運転死傷行為処罰法の新設
いくつもの重大事故を経て、悪質な運転による事故に対する量刑が軽すぎるという批判と、同時に法律の適用要件についても見直すべきという声を受け、自動車運転死傷行為処罰法(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律)が制定されました。
自動車運転死傷行為処罰法においては、危険運転致死傷罪と過失運転致死傷罪(従来の自動車運転過失致死傷罪)の規定に加え、発覚免脱罪(事故がアルコールや薬物の影響であることが発覚するのを免れる行為に対する罪)も規定されています。これにより、従来まで逃げ得とされていた、アルコールや薬物摂取によるひき逃げ事故も、重罰を科せられるようになっています。
■自動車運転死傷行為処罰法で追加された内容
新設された自動車運転死傷行為処罰法では、危険運転致死傷罪(致傷は15年以下の懲役、致死は1年以上の有期懲役)、過失運転致傷罪(7年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金)以外にも、次のような規定が加えられています。
①危険運転致死傷罪に新たに追加された規定
②刑を軽くした危険運転致死傷罪に該当する規定
③逃げ得に対して処罰を重くするための規定
④無免許運転に対して処罰を重くするための規定
①の追加された危険運転致死傷罪とは、通行禁止道路を重大な交通の危険を生じさせる速度で通行した場合を言います。この規定は、一方通行や高速道路の逆走、歩行者天国や自転車専用などの道路を高速で通行する行為が、極めて危険であることから設けられました。ただし、故意であることを前提としているので、不注意(過失)による場合は適用されません。
②の刑を軽くした危険運転致死傷罪とは、アルコール、薬物、病気の影響により、正常な運転に支障があるおそれがあると知りつつ、自動車を運転して結果的に正常な運転が困難になり死傷事故を起こした場合です。致傷では12年以下の懲役、致死では15年以下の懲役になります。
③の規定は、アルコールまたは薬物の影響により死傷事故を起こした者が、その事実を隠すために、さらにアルコールや薬物を摂取する、濃度を減少させるなどで、発覚を免れる行為に及んだ場合です。逃げ得と呼ばれる、ひき逃げ後の隠蔽行為によって、危険運転致死傷罪を適用させない行為に対し、厳しく罰するために設けられ、12年以下の懲役になります。
④については、死傷事故を起こした際に無免許運転であった場合に、刑を加重するもので、事故の原因が無免許にあるかどうかに関係なく適用されます。
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