交通事故の裁判と和解
交通事故で裁判が起こるのは、ほとんどが賠償(過失)の有無や賠償金額に争いがある場合です。示談がまとまらずに裁判になるのですが、多くの被害者は、賠償金額よりも加害者や加害者の保険会社による不誠実に腹を立てています。
営利を目的する保険会社は、当然のように理由を付けて賠償責任が極めて小さいことを主張したり、賠償金額を減額させようとしたりしてきますし、加害者に至っては、事故以来一度も謝意を見せず、保険会社任せという例も少なくありません。追い打ちをかけて、不当に低い賠償金額を提示されたら、誰でも裁判を考えてしまうほど、ひどい話はいくらでも存在します。
■交通事故の裁判では判決は少ない
裁判では、双方が口頭弁論を繰り返し、一方の主張に対して証拠と共に反論していくのですが、最終的に判決に至るケースは2割程度と言われています。なぜなら、裁判官が双方の利益に配慮し、和解案を提示してくることがあるためで、7割程度は和解で終了しています。
和解を受け入れるかどうかは、もちろん原告・被告の意思によるところで、一方が受諾しなければ判決になるでしょう。和解を受諾すると、判決の代わりに和解調書が作られて裁判は終了します。
和解調書という言葉に馴染みがないかもしれません。和解調書とは、裁判所で和解したときに作成される書類で、その効力は確定判決と同じです。結局のところ、判決なら判決書が、和解なら和解調書が手に入る違いしかなく、両者の持つ法的効力に違いはないので、和解を選択する意味は少なからずあります。
■和解する場合と判決の相違点
法的効力は同じなのに、判決と和解で違いが生じる場合もあって、しかも金銭的なことなので軽視は禁物です。それは、弁護士費用と遅延損害金の扱いで、和解を提示するとき、和解案に弁護士費用(5%から10%程度)と遅延損害金を含める裁判官は、まだまだ少ないらしく、和解では賠償金額が少なくなります。
和解も判決も同じような効果でありながら、トータルの賠償金額が異なってしまうのはおかしいように思えるでしょうか。裁判上であるとはいえ和解は和解なので、示談の延長上にあるとすれば、それも妥当なのかもしれません。
和解案そのものは、判決と同じ内容だと考えてほぼ問題ないとはいえ、弁護士費用と遅延損害金が大きければ、判決と大きく異なってしまいます。和解案が受けるに値するかどうか、弁護士と慎重に検討しましょう。判決が確定する前提で考えると、和解するよりも判決の方が得をします。
■和解することのメリット
和解案に弁護士費用と遅延損害金が含まれない場合のデメリットは言うまでもなく、それ以外においては、和解のメリットの方が大きいと考えられます。
・争いが早く解決する
和解することで、その時点で争いが終結し、訴訟が長引くことによる負担や、弁護士費用を軽減できます。相手方も承諾するとき、少なくとも和解案の賠償金額が手に入る点は大きいでしょう。
・負ける可能性がなくなる
誤解が多いですが、和解をすると控訴や上告という展開は当然あり得ません。控訴や上告は判決が確定する前にされるので、和解調書で確定判決と同じ効力を得れば、控訴や上告がなく判決が確定したのと同じだからです。交通事故の裁判は、二審や最高裁で逆転することがあるため、和解にデメリットがあっても確定するメリットを考慮するべきでしょう。
もし、和解をせずに争った結果、控訴されて二審で敗訴すれば、どうしても上告して最高裁に持ち込むしかなくなります。最高裁で訴えそのものが受理されるとも限らないので、リスクもあるということです。
このように、裁判所の和解案を相手が承諾しているときは、和解するか争い続けるかの判断は、心情だけで決めず、リスクも考えた上で行うべきです。絶対に負けない自信があるなら、控訴されても負けるはずはなく、戦い続けて遅延損害金が大きくするという戦略もあり得ます。
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