交通事故と民事調停
加害者(または加害者の保険会社)と被害者の示談ができなかった場合、すぐに訴えを提起するのではなく、裁判所には調停という手続きも存在します。調停では、話し合いをするため、裁判所職員である調停委員が間に入って進めていきます。
裁判所で行う調停のメリットは大きく、費用も裁判に比べてはるかに少なくて済みます。ただし、話し合いであることから、激しく争っているとそれだけ調停で解決する可能性も低くなります。
■民事調停の申立て
民事調停は、争いの当事者であれば加害者でも被害者でも申立てが可能です。加害者であっても、被害者から不当な請求を受けることがないとは言えず、示談ができないなら申し立てられます。
申立ては、相手方の住所地を管轄する簡易裁判所を原則としています。相手方と合意があれば他の簡易裁判所や地方裁判所でも可能で、人身事故であれば、損害賠償の請求者の住所地を管轄する簡易裁判所でも可能です。
調停の申立ては、申立書の他にも添付書類を必要とし、交通事故の場合には、交通事故証明書や損害賠償の算定基準となる医師の診断書、診療報酬明細書などを必要とします。また、請求金額によって手数料が異なりますので、予め用意しておきましょう。
【手数料の例】
・100万円:5,000円
・500万円:15,000円
・1,000万円:25,000円
・5,000万円:73,000円
■民事調停の流れ
申立て後、相手方に調停を行う日(調停期日と言います)が通知されます。調停期日に簡易裁判所に両者が出向き、2人の調停委員(男女)を通じてお互いの主張をしていきます。同席に問題がない状態なら同席での調停も行われますが、普通は同席しても当事者で言い争いになるだけで、話し合いが進まないため同席では行われません。
調停委員は中立の立場なので、弁護士のように依頼人の利益を守るために動くようなことはしませんから、請求に合理的な根拠を必要とします。もちろん、それは相手方も同じなので、いかに調停委員に理解してもらうかが調停のポイントです。
調停は話し合いがまとまらなければ、次回に持ち越されますが、すぐには開かれません。間が1ヶ月程度空くこともあり、調停でも解決には時間がかかります。話し合いが平行線のままでは、それ以上は進展がないとして調停は終了し、裁判によって決着を付けることになります。
なお、裁判所からの呼び出しに応じなければ、5万円以下の過料という罰則もありますが、実際に過料に処されるケースは極めてまれで、事実上において欠席もできます。
■民事調停のメリット
民事調停は、裁判所に場所を変えて話し合うに過ぎないので、最終的にはどちらかが折れるか、お互いに譲歩がなければ成立しません。最初から全く相手に話し合いをする気がなかったり、欠席されたりすると、どうしても不成立で終わってしまいます。
それでも、調停が利用されるのは、費用が安いだけではなく、合意ができて争いが終了したときに作成される調停調書の存在があります。調停調書は、話し合いでありながら確定判決を得たのと同じ法的な効力を持ち、裁判所のお墨付きで請求できるのと変わりません。
もし、調停調書に記載のある支払いについて、相手が実行しなければ、今度は裁判を起こすことなく差押えなどの強制執行が可能になり、大幅に手間と費用が減ります。裁判で判決を得るのも良いですが、絶対に勝てる見込みがなければ費用的に負担が大きく、先に調停で妥協点を探ってみるのも考えてみるべきでしょう。
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