逸失利益の計算方法
逸失利益を求めるための要素は次の4つで、そのうち生活費相当額の控除は死亡事故のときに、労働能力喪失率は、後遺障害があるときに使われます。
・被害者の基礎収入
・生活費相当額の控除
・後遺障害による労働能力喪失率
・就労可能年数に対応するライプニッツ係数
したがって、死亡事故と後遺障害では計算が異なり、得られる逸失利益も異なります。
■死亡事故の場合
死亡事故では、被害者の基礎収入から生活費を控除して基礎収入とします。これは、死亡による逸失利益をそのまま損害額にすると、使われないはずの被害者本人の生活費が含まれているからです。
しかし、生活費を実際に算出するのは困難なので、一定の控除率を使う方法もあります。裁判実務(弁護士会)の基準では、次のようになっており主流の控除率です。
被害者の立場 | 被害者の被扶養者人数または性別 | 生活費控除率 |
一家の支柱である場合 | 被害者の被扶養者が1人 | 40% |
被害者の被扶養者が2人 | 30% | |
一家の支柱ではない場合 | 女子の場合 | 30% |
男子の場合 | 50% |
ここで、被害者が一家の支柱である場合に、被扶養者が1人よりも2人の方が、控除率は低いこと、被害者が一家の支柱ではない場合に、女子の方が控除率は低いことに気付きます。控除されるべきは生活費なので、被扶養者が2人の方が生活費は少ないとみなされ、女子の方が生活費は少ないとみなされているのでしょうか?
生活費の控除率は、実際に発生しているであろう生活費ではなく、逸失利益による損害賠償で、遺族の生活保障という側面や、逸失利益に男女差が生まれにくいように考慮されています。控除率の低さは逸失利益の大きさになるため、被扶養者が多いほど、逸失利益を多くすることで、一家の支柱を失った遺族の生活を保障し、賃金が少ない女子の逸失利益を多くすることで、賃金が多い男子の逸失利益との格差を埋めています。
・生活費を直接使う場合:基礎収入-生活費
・生活費控除率を使う場合:基礎収入×(1-控除率)
上記のいずれかで、逸失利益の基礎収入を計算しますが、生活費をそのまま使うと、被扶養者が多いほど逸失利益が減ってしまい、男女の賃金格差がそのまま算出されるので、控除率を使用した場合と不整合が生じます。そのため、控除率を使用して生活費を控除する方法が主に採用されているようです。
次に、就労可能年数に対応するライプニッツ係数を乗じて、逸失利益を計算します。
逸失利益=生活費を控除した基礎収入×就労可能年数に対応するライプニッツ係数
■後遺障害の場合
後遺障害では、死亡時と違って被害者の生活費は賠償額から使われるので、生活費の控除がありません。しかし、後遺障害の程度によって、事故前の労働能力との差があるため、障害等級に応じた労働能力喪失率を逸失利益の算出に加えます。
労働能力喪失率を考慮すると、逸失利益の基礎収入は、基礎収入×労働能力喪失率になります。次に、就労可能年数に対応するライプニッツ係数を、逸失利益の基礎収入に乗じて、逸失利益を計算します。
逸失利益=基礎収入×労働能力喪失率×就労可能年数に対応するライプニッツ係数
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