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車両保険と偶然の事故の立証

保険金の支払いは、契約者の任意請求によってされるのではなく、保険会社が支払いを妥当と認めなければ拒否されるものです。そうでなければ、誰でも安価な保険料で高額な保険金を受け取れてしまい、保険金詐欺が横行して保険会社はなくなってしまうでしょう。

保険会社が支払いを拒む理由の1つとして、請求者の故意による事故があります。故意の事故は免責条項として約款に定められていますし、わざとぶつけて保険金を請求できないのは、常識的にも知られています。

では、保険金の請求に対して、その請求根拠になる事故が、故意であるかどうかは誰が立証するのでしょうか。

■故意の事故はどちらが証明するのか

これまでは、保険金が故意の事故ではないことを、契約者が証明しなければならない状況にありました。不正な保険金支払いを防止するには、請求が不正ではないことの証明、つまりは故意ではないことを、契約者自ら証明しなければならないと考えられていたのです。

その一方で、保険会社からすれば、故意を理由として保険金の支払いを拒否するには、故意であることを保険会社が証明しなければ道理にかないません。契約者が故意の事故であることを証明し、それによって保険金の支払いが拒否されるような茶番劇はあり得ず、支払わない正当な理由として、保険会社から故意である証明を求められるからです。

一般に、故意ではないことの証明と、故意であることの証明は難易度が全く異なります。故意であることの証明は、1つでも故意の証拠があれば容易に可能でも、故意ではないことの証明は、考えつくだけの全ての故意の状況を否定してもまだ足りず、故意の疑いが残ります。

さらには、会社として調査機能を持っている保険会社と、契約者個人の実質的な証明能力はまるで異なり、契約者が故意ではないことを認めさせるだけの十分な証拠を積み上げるのは困難です。それにもかかわらず、保険会社はこれまで契約者に故意ではない証明を求めて続けてきました。

■時代は少しずつ変わりつつある

2006年に最高裁判所が出した判決は、保険会社が故意を理由に保険金を支払わないとき、故意の立証責任は、保険会社にあることを判断した重要な意味を持ちます。

免責の性質は、保険契約成立時には発生を予見できない、不確実な事故への補償を引き受け、そこから故意などを対象から外すという考え方です。ですから、保険金を請求する側は、単に事故があったことを事故証明書などで証明するだけでよく、免責を適用させて支払いを拒否するなら、その事実を保険会社が証明するという理屈になります。

しかし、保険金の請求があったとき、保険会社がその調査能力を屈指しても、事故が故意であることの証明は難しく現実的ではありません。故意かどうかなど、運転者の内心の問題で、事故現場にその証拠が残ることはそれほどないからです。そこで、契約者に対して、故意の事故ではないことを強固に立証させようする動きは続いているようです。

もっとも、故意の有無で保険会社と争って裁判になった場合でも、最終的に保険会社が故意を証明できずに、和解で終わるケースも少なからずあるでしょう。

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