物損事故の消極損害
物損事故の消極損害は、財物に対する損害で被害者が得られるはずだった利益(逸失利益)に相当します。レジャー目的の車両と物損事故を起こしても、相手は車両を営業で使っていないのですから、消極損害は発生しません。つまり、損害を受けた財物が、営業上において必要であれば消極損害(休業損害)が発生し、営業と無関係なら発生しないということです。
■消極損害の考え方
物損事故で消極損害が発生するとすれば、営業車両か営業店舗のどちらかでしょう。どちらの場合も、事故で営業に影響すれば、本来得られる利益が失われます。
消極損害は、事故時に得られたはずの利益相当額×休業期間で求められます。利益相当額の求め方は、1日あたりの営業収入-経費になりますが、店舗などでは客入りによって異なるため、事故以前の数ヶ月を平均して求めることもあります。
■営業車両の場合
営業車両の消極損害は、代車が使われるかどうかで大きく違い、代車を使えばそのまま営業できる場合、代車費用が賠償されると消極損害は認められません。一方で、代車を使用せず、営業も休止していると、消極損害は認められます。したがって、営業車両では代車費用と消極損害のどちらかで補償されます。
また、移動販売車のように店舗兼車両の場合では、車内に調理設備があるなど特殊な改造を含むので、一般的には代車の用意が不可能で、修理または購入までの消極損害で補償することになるでしょう。
■営業店舗の場合
物損事故の賠償額が高くなる例として、営業店舗への損害が挙げられます。店舗の規模や設置されている設備、提供しているサービス、販売している物品などによって、営業店舗の損害には違いがあり、積極損害のばらつきがだけではなく、消極損害においてもケースバイケースで大きく異なります。
営業店舗では、事故で損害を受けても、全ての営業がストップするとは限りませんので、一部の営業が可能であれば、その分は消極損害の対象にはなりません。消極損害は、事故前の通常営業の利益平均と、事故後の一部営業との差額を求めて補償することになります。
また、営業店舗の消極損害では、従業員に対する給与も含まれます。損害を受けたことで失われる利益は、売上から経費や人件費を引いたものですから、利益だけを事業者に賠償しても、雇用されている従業員が得られたはずの給料がなくなってしまいます。したがって、事業者が失った利益に従業員が失った利益を加えて賠償し、賠償された事業者はその中から従業員の給料を支払います。
このように、営業店舗が受けた物理的な損害を修復するだけに留まらず、営業利益や従業員の給料まで含まれるため、場合によっては非常に高額になります。まれなケースだとはいえ、対物賠償責任保険を無制限にできるのは、こうしたリスクに備えるためです。
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